禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
デュークワーズは高い山脈と森に囲まれた国だ。
日照時間の短い土地故だろうか、ずっと遠い昔からこの国の人間は皆色素が薄く、その姿は他の国の人間と一線を画していた。
淡雪のように白い肌、そして白や銀を混ぜたような髪の色。
多少の濃淡の差はあれど、青銀や鈍色をした髪の者、或いは黄橡や朽葉色のような茶色を褪せさせたような髪を持つ者がほとんどだった。
その中にあって、少女の、アンの濃く鮮やかな髪色は人目を引くものだった。
髪だけでは無い。
その手足はこの国では珍しい程健康的な色をしていて、彼女が太陽の恩恵の少ないこの土地に於いて目一杯それに預かって育ったのだろう事が窺える。
『太陽に愛された子』
彼女は、育った町でそう呼ばれていた。