禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
月の照らす礼拝堂で金の少女と銀の男がただ二人、思いの丈を紡ぐ。
「騎士になって…貴方の背中を追い掛け続ければずっと側にいられる…そう思ったから私は騎士になったのに…」
「……アン………………言うな……」
「ただの妹じゃいつかは側にいられなくなるから…私は剣を握ったのに…。
もし貴方が王位の座に就いても、騎士として側に仕えられればそれでいいって…!」
アンは蜜色の髪をサラサラと垂れさせて俯いた。血で汚れた床にポタポタと涙が落ちる。
リヲは瞳に儚く映るその姿を掻き消す様にぎゅっと瞼を閉じた。
そしてゆっくりと目を開き、意を決してからアンの両肩に静かに手を置いた。
「……アン。
大丈夫、お前は神に愛された子だ。きっと生きてまた会える。
俺も死んだりはしない。必ず陛下をお守りしていつの日かデュークワーズに戻る。
それまで…ほんの辛抱だ、アン」
泣き濡れたアンの瞳に映ったのは、とても優しく穏やかに笑うリヲの顔だった。
リヲはアンの前髪を優しく指先で分けると、額にそっとキスを落とし
「…護りのキスだ。
愛すべき妹、アン=ガーディナーに神の祝福があらん事を」
そう紡いでから、アンに背を向けた。