禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「随分と数が減っちまったなぁ、デュークワーズも」
呑気な声を上げて馬から降りたヨークは扉を失った礼拝堂へと進み入る。
「…やっぱり来たか。バケモノのお出ましだ」
その姿を見留めたミシュラがグッと唇を噛みしめた。
畏怖の念に駆られ皮の手袋にじんわり汗が染み込む。
アンもまたアイスリットの下で濃碧の眼を歪ませ、卑しいものを見るような眼差しで睨んだ。
昨日の戦いで大きく兵を失ったデュークワーズは、教会への護衛を最低限の数しか着ける事が出来なかった。
礼拝堂の中にはアンとミシュラ以外たかだか10名程の槍兵しかいない。
バケモノ相手に果たしてどこまで渡り合えるか。ミシュラは背水の陣を感じながら剣の柄を強く握り直した。