禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~


ドオォォン…と云う爆発音と、天にまで届かんばかりの炎の柱は、遠く離れた城からも確認できたと云う。


ヨークの放った業火は一瞬で教会を飲み込み、その場にいた者達に何が起きたかを理解させる間もなく塵にした。



「やべ、やりすぎたか?」


燻った煙の筋をたてる掌を、ヒラヒラと振りながらヨークは黒く燃え尽きた教会の残骸を見つめた。

敵も味方も分からなくなった黒焦げの鎧を踏みながら、アンの居た方へと歩みを進める。

キョロリと辺りを見渡し、僅かに残った大理石の柱の影を覗きこんで、ヨークは嬉しそうにニタリと目を歪めた。


「褒めてやるぜ、デュークワーズの二番手さんよ」


弓形に細めたヨークの瞳に映ったのは…

いささか火傷を負って気を失っているアンと、それを全身全霊で守り鎧ごと後ろの半身を焼かれたミシュラの姿だった。


ミシュラの判断は見事だった。
咄嗟にアンを庇いながら自身と共に大きな柱の影に飛び込んだおかげで、二人が
ヨークの炎に焼き尽くされる事は無かった。

けれど、大理石の柱さえ焼き消したおぞましい炎はアンを庇ったミシュラの背を焼いた。

大理石の柱と、第一騎士団副長だから身に付ける事が許された銀の魔除けが施された特注の鎧。そのふたつが幸いし炎はアンとミシュラを焼き尽くすまでには到らなかった。

けれど、庇われたアンは軽傷で済んだものの、その身を呈したミシュラは大きく背を焼かれ生死さえ定かでは無い状態であった。


< 199 / 271 >

この作品をシェア

pagetop