禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
ヨークはアンに重なっていたミシュラの身体を乱暴に蹴り飛ばすと、気を失っているアンの片腕を強引に引っ張りあげ身体を起こした。
そしてアンの一部焼け焦げた兜を外し投げ捨てると、バサリと流れた金の髪と目を閉じたままの顔をマジマジと眺め
「キレイな顔が焦げなくて良かったな。半焼けにでもなっちまったら萎えちまうもんなあ」
と、愉快そうに一人、声を上げて笑った。
やがて、天井を失くした教会の上に翔んで来た黒い鳥を見つけると
「陛下に伝えろ!聖女は手に入れたと!!」
そう叫んで、気を失ったままのアンを抱きかかえた。
教会の周囲にいたギルブルクの兵達が声をあげ、オオオと喜びの勝鬨を上げる。
騒然とした中、ヨークは抱えたアンごと巨躯の愛馬に乗り悠々と街を去っていった。
未だ燻った煙をあげる教会には、命を賭けて戦った勇敢な兵士たちの遺体と、ピクリとも動かなくなったデュークワーズ第一騎士団副長の身体が、虚しく転がっていた。