禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
国外への脱出を決めたヴィレーネには、リヲを中心とした護衛が三人と召し遣いの女が一人だけ着いた。
ギルブルクに気付かれぬよう細心の注意を払いながら、早馬に国外までのあちらこちらに手引きや馬の用意をさせ、ヴィレーネ達は城の地下道を通って王都を夜中のうちに脱け出した。
そして殉教の馬車に紛れ国外れの近くまで来ると、用意させておいた馬でそこからひたすらに駆け出した。
深かった闇が白々明けだし視界が開けてからは森へ飛び込みその身を隠しながら走り続けた。
とにかく、国境を越えなくては。
デュークワーズの東に隣接するアラカレードは世界でも指折りの巨大国家だ。そこへ逃げ込んでしまえばギルブルクと言えど迂闊に手出しは出来ない。
それに異国民も多く人口の多いこの国は逃亡者を隠すのにうってつけであった。
アラカレードに住むデュークワーズ王家の遠縁にあたる者の協力を得て、しばし正体を隠しながら生活の出来る宛も出来ている。
あとは、国境を越えれば。
最後の希望であるヴィレーネを安全な地へと逃がす事だけを考えて、逃亡者達は走り続けた。