禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「ミシュラ…!ミシュラ…!!」
自分を守ると約束してくれた男は、それを為すため盾となった。
―――嗚呼、ミシュラ。ミシュラ。
悲しくて悲しくて涙が止まらない。
彼の愛を拒んだのに、それでも全てを、地位も命もなげうってアンを守ってくれた。
ごめんなさい、ミシュラ。
私のせいで。私のために。
もう届かない声。アンはただ子供のように泣きじゃくる事しか出来なかった。
そして。
「男の心配もいいけど、ちったぁ自分の身も案じた方がいいぜ」
アンの髪を引っ張りドサリと乱暴に自分の懐へおさめたヨークの言葉に、アンは更に悲しみを重ねる。
「聖女の仕事が終わればテメエは俺のもんだ。今から媚のひとつも売っといた方が得だぜ?」
これから何が起きるのか。ギルブルクが何を企んでいるのかそれは分からない。
けれど
―――…兄さん…兄さん…
自分が生きて再びリヲと会える日が来るのか。その希望が果てしなく遠い事だけは、アンにはよく分かっていた。