禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
気持ちの悪い感触に、アンは必死に口内で拒み続ける。やがて嫌悪は攻撃衝動に変わりアンは自分の中に浸入してきたヨークの舌を思いっきり前歯で噛んだ。
けれどヨークは顔色ひとつ変える事なくもっと奥へとその舌を進ませる。
アンの口内に血の味が広がった。
「……!?」
それが、普通の鉄臭い味で無いとアンが気付いた時には遅かった。
舌に痺れるような、それでいて芳香で、なのに堪えがたい嫌悪を催すような。
有り得ない味の血はトクトクと静かにアンの喉へと流し込まれた。
吐き出したくとも塞いだヨークの唇がそれを許さない。
アンはむせかえる思いで苦し気にコクリと小さく喉を鳴らし、それを飲み込むしかなかった。
「……はっ…ぁっ…」
やっと唇が離された時には、アンの口内はヨークの血で満ちていて真っ赤に染まっていた。
「…何を…したの…!?」
まだ目の前にある不適に笑んでいるヨークの顔をキッと睨み付けてアンが問う。
ヨークは漆黒の瞳を歪ませクツクツと笑いながら
「俺の血を飲んだな?これでテメエも不死の仲間入りだ」
そう言った。