禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
1000年前、世界には今で言う“魔法”と呼ばれるものが存在していた。
自然界に存在する火、水、風、地の四大元素霊。人は独自の儀式によりそれらを従え操る術を持っていた。それがいわゆる“魔術”である。
己の精神の強さと自在に操る技術。それにより“魔法使い”の優劣は決まり、世界はより強い“魔法”を求め競い合うようになっていった。
そしてある時、強大な力を得んが為に禁忌を犯した者が現れる。
―――“闇”の力。
常世(とこよ)ではなく隠世(うつよ)の住人である上位精霊“闇”。
それは人の“魔術”で到底抑えきれる代物では無かった。
だが、その並々ならぬ力を欲した魔法使いは膨大な生け贄と引き換えに闇の精霊と契約を結び従えた。
愚かな魔法使いはその力を身に宿し自らを混沌の王と名乗った。
混沌。まさに世界は秩序を失くし混沌へと陥って行く。
闇の力を手にした魔法使いは強大過ぎる力で世界を従え、立ち向かう命を蹂躙した。
そして魔法使いに宿った闇の精霊は力の代償に贄を欲する。血を、死を、絶望を寄越せ、と。
愚かな魔法使いの果てのない欲望と、決して常世に出してはならぬ卑しき力。
そのふたつに支配され、世界は以後百数十年、暗黒の時代を過ごす事となる。