禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「もう分かっただろう。その国っつーのがデュークワーズ、てめえの国だ」
ヨークの紡ぐ話は、にわかにはアンには信じ難かった。
まるで神話か、でなければ子供のおとぎ話だ。
けれど、この男が不死で黒い炎を魔法で操るのを見る限り嘘だとは言いきれない。
アンは口を挟まず、ヨークの話の続きをただ黙って待った。
「暗黒の時代から世界を守った事で、デュークワーズは『人類の守護国家』の呼び名を得た。けどそれは誇らしいだけでなくその後何百年も重責を強いるモノだったのさ」
ギシリと椅子の背もたれに体重を掛けながら、ヨークは話の続きを紡いだ。
混沌の王は、デュークワーズの叡知を集め作られた魔方陣に封じ込められた。
そしてそれが二度と現世に現れ無いよう守り続ける事が、デュークワーズの責務となった。
しかし、数百年の時を経て人々の記憶から暗黒時代の恐怖が消えると再び“闇”の強大な力を欲しようとする愚かな者が現れ出す。
デュークワーズはそれを許さず封印を死守する事に国力を注いだ。
封印の魔方陣を守る精鋭の騎士を揃え、そして。
安易に解かれないよう、封印を司る力をふたつに分けた。
光の力を身に宿す者と、それを定める者。
力と共に受け継がれる贄、先の女王の捧げた高潔。力を宿す者に純潔を、定める者に高貴の血を、捧げる事を課すと共に。