禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
デュークワーズの子供は産まれながらにしてその地の四大精霊の加護を受ける。
「四大精霊も魔法が廃れてからはよく分からねえ扱いになっちまって、今じゃ一括りに『神』なんて呼ばれちまってるけどな。
まあつまり、デュークワーズの国民は長年『神の力を持つ民』なんて呼ばれてたんだ。そうしてその中から選ばれた純潔の女が代々『聖乙女』になったってワケよ」
薄闇の中で敵の口から語られた『聖乙女』の誕生。
自分の身に宿したものの重さをこんな形で知る事に、アンは戸惑わずにはいられなかった。
「『定める者』つまり、王家の血筋であるヴィレーネ女王が選び儀式を行った事で、光の力…封印を司る力はアン=ガーディナー、あんたに全て託されたんだ」
そして、アンには段々と分かってきた。自分がここに連れて来られた意味が。
「もう気付いただろ?封印の魔方陣は城に保管され古めかしい旗に擬態されてた『聖旗』だ。
魔方陣と封印を司る女。デュークワーズってのは全世界の全人類の為に、そのふたつを死守すべき国家だった筈だ」
けれど。
長い長い歴史の中でデュークワーズはその使命を忘れてしまった。
あるいは、隠蔽する事で闇の力の存在そのものを歴史から消そうとしたのかも知れない。
聖旗と聖女はその意味も分からないまま受け継がれ、本来の価値すら見失われてしまったのだ。