禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「…その忌まわしい封印を解こうって云うの?」
アンはこの城に来て初めて口を開いた。
信じがたくも恐ろしい話が本当なら、これからギルブルクが自分にさせようとしている事は人類の存亡に関わる。
尚更、従うワケにはいかない。
「まあな」
口を開いたアンに少し驚きの表情を見せながらもヨークは飄々と答えた。
「…!そんな恐ろしい力、使いこなせる筈が無いじゃない!!人類を滅亡させる気!?」
アンの中に得体の知れない怒りが沸く。それは長き眠りから危機によって揺り起こされた聖女としての血なのか。
けれどヨークは食って掛かったアンに向かってニヤリと口角を上げ笑うと、得意気に左手の中に小さな炎を産み出し弄んで見せた。
「誰が使いこなせねえだって?」
忌まわしいうねりを見せる黒き炎を草色の瞳に映して、アンは表情を強張らせた。
「…まさか…その力は……」
「“闇”の力の欠片ってとこさ」
ヨークの手から度々放たれた忌まわしき炎。それは現世の赤く煌々とした炎では無く、影のように黒い色をしていた。