禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
―――捧げよ。なれば闇の盟約に基づきそなたに力を与えん。
「自分が元々欲深なのは、まあ認めるぜ。けどよ、その声にはどうにも抗えない響きがあったんだ」
気が付くとヨークは自分の血を捧げていた。左手首を落とさんばかりに切りつけて。
血を浴びた鳥の死骸は、まるで時間を遡るかのように本来の姿を取り戻していった。そうして甦った漆黒の翼で羽ばたくと、大空を旋回してからヨークに向かって滑降し…そのまま消え入るように彼の体に吸収された。
「体の中に得体の知れない力と、俺が知る故も無い知識が広がって“闇”とひとつになったのが分かった」
“黒い鳥”は、先の混沌の王が闇の力で生み出した魔物のひとつだった。
ほとんどの魔物は混沌の王と共に封印されたが、わずかにも逃げ仰せたものもあったのだ。
主を失った彼らは光の者達に見付からぬようにひっそりと影に生き長き眠りに着きながら待った。再び闇の王を解放せしめん者が現れるのを。
「…じゃあ……あなたのその力は……」
「お前が純潔を捧げ聖女の力を手にしたように、俺は俺の血肉と命を捧げ闇の力を手に入れた。尤も混沌の王の力の端くれみたいなもんだけどな」
そう言ってヨークは弄んでいた黒い炎を突然グッと握り潰すと
「けどな」
ニヤリと大きく口角の端を歪めて笑った。
「お前が封印を解いた時。俺は強大な力を手に入れ新世界の王になる」