禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
妹としてしか側にいられないのなら、それでもいい。リヲがヴィレーネと結婚し王位に着こうとも。ならば私は王宮の騎士になり貴方に仕える。
---愛する男(ひと)の側にいたい。
ただそれだけを胸に秘め生きてきただけなのに。
そんなアンの細やかな望みは、世界の命運と云う巨大過ぎる刃に断ち切られた。
もう、リヲには会えない。
このままギルブルクに抵抗し続け拷問に掛けられる日を何十年と続けるか。
さもなくば邪悪な力を甦らせ世界を滅亡させた挙げ句、あの忌まわしい男のものになるか。
どちらにしろ、アンには絶望の選択しか無かった。
もう愛する男の胸の内を謀り夢を見ることすら出来ない。
「……兄さん………兄さん……」
泣いても、叫んでも差し伸べられない手を夢見ることすら。