禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
満月の晩は七度の夜を越えた日に訪れた。
アンは従属を承諾したものの逃走を危惧され相変わらず牢に閉じ込められていた。それでも与えられた衣服や食事が多少良くなったところを見ると、彼女の機嫌を損ねないようにとの気遣いも感じられる。
外の様子を知ることの出来ないアンでも通風孔の窓から微かに聞こえる陽気な楽器の音に、街中が宴に向け盛り上がっている事が伺えた。
そんな日々を、アンは食事にも手を着けず誰とも言葉を交わさず過ごした。
ただじっと、目を閉じ部屋の隅でうずくまり続けて。
様子を見ていた兵らは彼女は怯え竦んでるのだと解釈していたが、アンはこれっぽっちも怯えてなどいなかった。
ただ。
対話をしていたのだ。内なる自分と。
1000年の歴史を持つ聖女の魂と。
―――私が忠誠を誓うのは、ヴィレーネ女王でもギルブルクの王でもない。
リヲ。
貴方にもう一度、会いたい。
その奇跡のためだけに私は。
私は、世界を守る。