禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
しかし、そんな怪訝な考えを表情に浮かべるアンを見てヨークは可笑しそうな笑みを浮かべると
「そんな顔するんじゃねえよ。確かにてめえは殺しても足りねえくらいとんでもねえ事をしたけどよ、俺は器がでかいんでね。その事はもう水に流してやる」
と、思いもしなかった言葉を掛けてアンの目を丸くさせた。
そして、更に体を近付けさせゆっくり手を伸ばすと
「それにお前にはまだ重大な仕事が残ってるんだ。手荒な真似はしないでやる」
彼女の黄金の髪を一房つかみながら、そう言った。
「…まだ私に何かさせるの…?」
アンはヨークの手を身を捩りながら避けて恐々と聞く。
「もういいでしょう?私の役目は終わったわ。私はもう聖女じゃない。闇の力の消滅と共に光の力も失った、ただの女よ。
お願い、もう…もう、私を解放して…国へ返して」
恐々と、けれど切に願いながらアンは言葉を紡いだ。
あれだけの苦しみを味わったのだ。もう、こんな運命から解放して欲しい。そう心から願った。
しかしヨークは口元にわずかに怒りを滲ませると
「馬鹿言ってんじゃねえ。あの時その場で八つ裂きにしなかったのはてめえにまだ利用価値があるからだ。
それが出来ないって言うなら、てめえの首は今ここで俺が切って落とす」
つかんでいたアンの髪をグッと引いてそう言った。