禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~




アンは一度たりとも声をあげなかった。


どんな辱めを受けても、口を引き結び、固く目を閉じて、決して声を漏らさなかった。

ただ、この悪夢のような時間が過ぎるの身を固くしてひたすらに耐えた。


目的は単に子を成す事だったヨークだが、そんなアンの頑なな態度に段々と苛つき始める。

「たまには声のひとつも出してみろ、可愛くねえな」

時に従わせようと乱暴に、時に気紛れからか優しく、毎日のようにアンの身体を抱いたが、彼女の態度に変化が訪れる事は無かった。


一度は神に純潔を捧げた穢れ無き身体。

美しく健やかに成長し、男の目等に触れる事さえなかった清純で瑞々しい肢体は、日々、ヨークに好きなように扱われ汚されていく。

そんな魂を蝕むような恥辱に、アンが耐え忍んでいられたのは、ただひとつの願いからだった。

闇の力を失った今では、ヨークもその血を飲まされたアンも、もう不死では無い。

彼女は行為の最中に舌を噛み切ることも、ひとり牢に残された時に首を括る事も出来た筈だ。

けれど、彼女は決して自らの命を絶つ選択はしなかった。

屈することも死ぬことも、しない。

いつ終わりを迎えるか分からない地獄の日々で、
アンは命も誇りも決して手放そうとはしなかった。



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