禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
そんな日々が数ヶ月続いた時だった。
頑なな態度を取ることを止めないどころか、一向に子を孕む気配の無いアンに、ヨークの苛立ちはピークに達する。
「とんだ欠陥品だな、聖女さまはよぉ」
今宵も、声の一つもあげず自分を見ようともしないアンに、ヨークは行為の手を止めてそう言った。
「子も孕めねえ、女としての悦びも感じねえ。てめえは見た目だけは極上だけど、中身はその辺の娼婦にも劣るな」
苛立ちと呆れを隠そうともせずに言い放って、ヨークはベッドに裸のアンを残したまま立ち上がり服を着た。
……ヨークが自分に見切りを付けた?
そう思ったアンの心に、一瞬の希望が過った。
解放されるかも知れない……?
アンの縋ったそんなか細い一筋の希望は、次の瞬間、牢を出ながらヨークが見張りの兵に掛けた言葉に、無残に潰えられる。
「おい、あの女、お前ら好きにしていいぞ」
耳に届いた信じられないヨークの言葉に、アンの目の前が真っ暗になる。
「いいんですか?あの女は…」
「俺はもういらねえ、時間の無駄だ。子も孕めなきゃ暇つぶしにもなりゃしねえ。後はお前らで好きにしとけ」
遠ざかっていくヨークの声が木霊のように聞こえる。
アンはただ、次に始まる新しい地獄の訪れに、服を纏うのも忘れ呆然とベッドに座り込むだけであった。