禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~


「…わかった…。それから」

リヲが短く促すと、間者は今度は一瞬言葉につまり、目を伏せてから言い辛そうに話し始めた。

「……アン様ですが……なにせギルブルクに捕らわれているので、情報の真偽が確かめ難く…」

「それでもいい、分かっている事を話せ」

語調の強くなったリヲに、間者は覚悟を決めると低い声で話し始めた。

「……地下牢に捕らわれていたアン様はヨーク将軍の正妻になるとの話だったのですが、……先日入った情報に寄ると、どう言う訳かそれは無くなり、今では……」

「……どうした?」

「…………兵士たちの…慰み者として幽閉されていると……」


間者の言葉に、リヲの心臓が大きく不快な音を立てた。

「……リヲ様……」

尋常ではなく険しい表情を浮かべたリヲに、間者は心中を察して恐る恐る声を掛ける。

リヲはショックと怒りで体中の血液が煮えくり返るように熱くなり、手に汗を滲ませながら震えた。

「リヲ様、どうか気を確かに。
今、アルカレードに集っている騎士団の生き残り達で、アン様を救出する手立てを考えているところです。
敵の懐へ飛び込むのでまだ時間は掛かりますが、必ずやアン様を救出致しますので、どうかリヲ様はお気をしっかり持って陛下の側におられて下さい」

間者の男は、血走った目で奥歯を噛み締めるリヲを落ち着かせようと声を掛けたが、その言葉は彼の頭には入っていかなかった。



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