禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
『リーザス…その髪の色は…』
『夜の色に染めた。これなら闇夜に紛れお前に会いに来ても見つかるまい』
アミリアと同じだった太陽色の髪を夜の色に変え、リーザスは月の出ない夜になるたびアミリアに会いに来た。
ふたりは逢瀬を重ね愛を深めたが、世界を守る重責からその身体が結ばれる事は無かった。
しかし、そんなふたりのささやかで大切な時間も、ある日突然終わりを告げる。
アミリアに会いに来ていた事が見つかってしまったリーザスはその責任を取らされ、今度は南西の僻地の警護を任命される。
そこはかつて、ギルブルクが建国する以前はデュークワーズの地である“黒い沼”だった。
“黒い沼”の警護。それは実質、死刑宣告に等しかった。
元より瘴気の漂う環境の悪さに加え、対戦以降は封印から逃れた闇の精霊の下部たちが黒い沼には住み着いている。
いくら国で一番の剣の使い手とは言え、そんな場所に一人で投げ込まれ、一年と生き延びられる筈がなく。
リーザスが夜の闇夜に紛れアミリアに会いに来なくなってから数ヵ月後。
城には彼の死亡報告と最後にアミリアに綴った手紙が届けられたが、それがアミリアの元に届くことはなかった。
何も知らぬアミリアは待ち続けた。
もう来ぬ愛しい人の訪れを、夜の闇の中に探し続けた。
たとえこの身が結ばれなくても、悠久の愛を誓ったリーザスを待ち続け。
重責を背負わされながら、心の拠り所になる人を奪われ、半ば幽閉状態で塔に住まわされていたアミリアは段々と精神を病んでいった。
そして、新しい聖女を作り光の力を次の者へ託す術が編み出されると、彼女はその責務を肩から下ろし62年の生涯を静かに閉じた。