禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「リヲ団長はいつになったら陛下と契りを結ばれるんですかねえ」
兵達の宿舎の食堂で、木製のゴブレットに注いだ葡萄酒を煽りながら下世話な会話が交わされる。
いや、国の行く末が懸かっているのだ。下世話に聞こえてその内容は至って真面目だ。
「陛下もさっさと婚姻の儀を取り付けちまえばいいのに、やっぱあれかね。自分に気持ちが向いてない男と夫婦になるのはイヤって言う女心なのかね」
「おいおい、城下内だぞ。口を謹め」
「けど、リヲ団長が筋金入りの朴念仁だもんで陛下だって躊躇してるんでしょう。可哀想に」
「ほんと、団長は女心が分かってないよ。たっぷり優しくしてちょいと強引にしてやりゃあ女なんてのは喜ぶんだ。そうすりゃ陛下も心置きなく団長の胸に飛び込めて、世継ぎをこさえてメデタシメデタシってなるのになぁ」
普段厳しい訓練を強いられている腹いせか、それとも葡萄酒が程好くまわってきたのか。兵士たちは好き勝手にリヲの事をくさし、王位と女心に揺れる君主を気の毒がってみせた。
実際、国民は焦れていたのだ。
この時世になかなか世継ぎを作らない女王に。
そして、男のくせにそれをリードしようとしない朴念仁に。