禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
リヲの指示にミシュラは目を丸くした。
確かに、手合わせをするには相手より実力が上の者でなくてはならない。それもかなり。余裕をもって相手の力量を図れなければ互いに怪我をしてしまうからだ。
けれど、相手はアンだ。
いくらアンがお転婆とは言え、まだ士号さえ持っていない細腕の少女に、ここにいる誰もが負けるわけがない。
十人長でも十分過ぎる所を、念のため彼女の安全を考えて百人長にしてやったのに、それを副長自らが相手をしろなどと。
馬鹿げてるを通り越して、ミシュラはリヲが何を考えているか分からなかった。
ミシュラにだってプライドがある。アンには悪いが小娘の相手をわざわざ副長である自分がやらなくてはいいではないかと、僅かに眉を潜めた。
だがリヲはそれを訂正する気はさらさら無いようで、相変わらず腕を組んで黙って立っている。
あまり良い反応をしなかったミシュラにアンは少々戸惑ったが、意を決すると
「ミシュラ副長、宜しくお願い致します!」
と一礼してから剣を構えた。