禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「分かってるな!?例の物が無いか確認してから火を放て!燃やしちまったら元も子もねえからな!!」
周囲の兵達に向かってそう叫ぶ男の鎧には、胸元に龍の眼の様なヘマタイトが埋め込まれギルブルク王国の紋章が刻まれている。
つまりそれは彼が王家直属の騎士である事を示す。
ヨーク=レストログ
ギルブルク王国最強と謳われる若き黒龍団将軍であった。
「ヨーク将軍!民家は全て調査しましたが例の物は見付かりませんでした!」
兵の一人が大馬に跨がっているヨークにそう報告をしに来た。
それを聞いてヨークは気だるそうに首を回すと、まさしく今、火の放たれようとしている民家をゆっくりと見やり
「豚小屋も鶏小屋も調べたんだろーなあ?」
足元の部下に向かってそう尋ねた。
「か…家畜小屋もですか?」
焦りながら尋ね返した部下の兵に、ヨークは鋼鉄製のブーツを履いた足で蹴りを喰らわすと
「バカ野郎!!草の根分けてでも探せって言ったじゃねえか!!」
そう怒鳴って馬から飛び降りた。そして
「ちっ、どいつもこいつも使えねえヤツだな」
と忌々しげに吐き捨てながら、火を放とうとしている兵達の元へ行き
「おい!まだ燃やすな!家畜小屋を調べてからだ!藁の下まで全部調べろ!奴ら何処に隠してるか分かったもんじゃねえからな!」
大鷲の様な声でそう指示した。