禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
兵達は慌ただしく捜索を再開し、ヨークもまた自ら一軒の水車小屋へと入っていった。
「ここにもねえか…」
薄暗い水車小屋の中をあちこち見回し、チッとひとつ舌打ちをした所で突然物陰から何かが飛び出した。
それは息を潜め隠れていた村民の生き残りでまだ年若い少年だった。
農具を矛の様に構えて自分に襲い掛かって来た少年を、まだ暗闇に目が慣れていないヨークは紙一重のところで交わした。
だが、勢いよく突き出された農具にかすった兜が亀裂と共に後ろへと落ちる。
その瞬間、兜に収めていたヨークの黒鳥のような黒髪がバサリと羽のように広がった。