禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「くそっ!」
渾身の一撃を寸での所でかわされた少年は、振り返りもう一太刀を浴びせようと構えた。しかし。
次の瞬間、少年は声もなく炎に包まれた。
この世の物とは思えない黒い炎は、あっという間に少年から人の形を奪い塵さえ残さず消し去った。
「…ガキが…!脅かすんじゃねえよ!」
忌々しげにそう呟いたヨークの左手はたった今消え去った少年の方向に向けられており、その甲には不気味に光る六芒星が浮かび上がっていた。
「…ったく、思わず使っちまったじゃねえか」
ヨークはそう言って左手を一度握りしめると軽く左右に振った。甲の六芒星がスウと跡形も無く消える。
そのまま小屋から出ていこうとした彼の耳に小さくカタンと音が響いた。