禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
コンコン、と本日数回目のノックの音に
「はい」
アンは嫌な様子も見せず椅子から立ち上がって部屋の扉を開けた。
「ご機嫌如何ですか?麗しきお嬢様」
赤毛の癖っ毛を揺らしながらおどけた口調でバウアンドスクレイプの礼をとる男。
「機嫌は良くってよ、ミシュラ子爵殿」
笑いを含みながらアンもそれに合わせて答える。
「それは何より。では、僭越ながらこの私目と一曲踊っては頂けませんか?」
「?踊る?」
不思議そうな顔をしたアンの前にニュッと差し出されたのは、いつも騎士団で使っている訓練用の剣だった。