禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「副長は皆の面倒を見るのが仕事だからね。休日でもないと自分の訓練がなかなか出来ないんだよ。すまないね、付き合わせちゃって」
「私なんかで副長の役にたてたなら嬉しいわ」
「いやいや。うちの団で僕とやりあえるのは君とリヲぐらいだからね。リヲはあの通り忙しいし、アンが付き合ってくれて本当に助かるよ」
ハアハアとまだ肩で息をしながら、二人は揃って汗を拭った。
陽射しのよく当たる城の中庭。ほどほどの広さがあるのにあまり人が訪れないこの場所はミシュラの密かな鍛練場所だった。
程好く身体を動かした二人は中庭の隅にあるベンチに並んで腰を降ろした。白く塗られた楡のベンチに咲きすぎた薔薇の苗がもたれ掛かっている。
ミシュラは置いておいた手荷物から皮袋の水入れを出すとアンに手渡した。
「ありがとう」と素直に受け取って口付けるとアンの口にフワリと華の香りが広がった。