禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~


「アンはリヲに気をつかいすぎじゃないのかな」

そよぐ風に麗しく揺れる野薔薇を一輪手折って、その香りを楽しみながらミシュラが告げた。

「リヲは確かにおっかないし、今は君の上司に当たるわけだけど、でも君はもうちょっと彼に反論してもいいと思うよ。だって、リヲが君に言ってる事は時に滅茶苦茶だもの。贔屓の逆だね。アンにだけ理不尽に厳しすぎる」

それは、第一騎士団の誰もが思っている事だった。

リヲは普段から戒律に厳しい男だったがアンに対しては殊更それが酷かった。

身なりのチェック、挨拶の仕方、それに加え剣の訓練に於いても。

非の打ち所が無い彼女に、リヲは難癖にも近い叱咤を浴びせた。

一緒に訓練をする兵達は皆それをウンザリした様子で眺めたが、アン本人だけはその難癖を真摯に受け止め礼を述べていた。


< 71 / 271 >

この作品をシェア

pagetop