禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~



ミシュラは見兼ねて一度リヲに食って掛かった事がある。

「いい加減にしろ!!君がやってる事は指導じゃない、難癖をつけてアンを虐めているだけだ!自分の妹だろ!?もっと優しくしてやれよ!」と。

けれど、リヲは眉ひとつ動かすことなくその切れ長の瞳でミシュラを冷ややかに見下ろしながら言った。

「デュークワーズの騎士である以上、妹とて甘やかしはせん 。例え命を落とすとしてもな」

その台詞は低く冷酷に、ミシュラの耳に届いた。

ミシュラのアンに対する庇護欲が強くなったのは、この時からかも知れない。


「僕の事、兄だと思って甘えてもいいんだよ。ただし、リヲには内緒でね」

可哀想なアンを見兼ねて、冗談目かしながらそんな事を言ったこともあった。

けれど、アンはにこやかに礼は言えどそれに甘んずる事は決して無かった。


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