禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「いえいえ、私なぞアン様の御苦労に比べたら何も」
そう照れ臭そうに言って鼻を掻くサラは本当に屈託がない。
貴族の出ではあるが国外れののどかな市街地で生まれ育ったせいか変に偉ぶった所がなく、良い意味で庶民的な娘だった。
聖旗守護騎士団の副長は聖乙女の身の回りの世話をするため必然的に女になる。
サラは前任の団長の時から仕え、副長として三年目になるため聖旗守護騎士団としてはアンよりも先輩になるのだ。
初々しいアンにはそんなサラの存在がとても心強い。
「副長がサラで良かった。もし世話係がお堅い侍女だったりしたら息が詰まって聖乙女なんかやってられないわ」
「あらまあ、アン様がお転婆娘だと云う噂は本当だったんですね」
「やだ、サラまでそんな事を言うの?」
「私のは親しみを籠めてですよ。今のでグッとアン様に親近感が湧きました」
そう言ってクシャリと笑ったサラに、アンも一瞬目を丸くした後弾けたように笑った。
その夜、新しい聖乙女を迎えた聖旗の塔では二人の娘の明るい話し声がいつまでも響いたと云う。