禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「団長。近衛第一部隊から第八部隊までの配備、整いました。ボーガン隊も第二騎士団と併せ王都の砦に配備完了しています」
城の南手にある監視塔。そこから王都へ進入する唯一の砦を遠目に見つめる男に、第一騎士団副長ミシュラは報告をした。
国で一番高いと言われている塔に立つ男の銀の髪は風に強く靡かれている。
「御苦労。ミシュラはそのまま近衛第一部隊に合流してくれ」
風に翻弄される銀を兜に納めながら、リヲはそう指示した。
「団長は?」
同じく兜を被りながらアイスリットを上げてミシュラは尋ねた。
「俺は女王陛下から離れる訳にはいかん」
「だよね。一番お護りしなくちゃならない最後の希望だ。頼むよ、亡国の守護騎士殿」
塔を出て王宮に戻る途中、ふとリヲの視線が東の塔に向いたのをミシュラは見逃さなかった。
「アンはそのまま聖旗の塔を護衛か。あっちが攻めこまれる可能性は低いけど…大丈夫かな」
兜越しのくぐもった声でそう呟いたミシュラの言葉に、リヲは無言のまま足を止める事無く廊下を進んだ。