禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
城に待機していた生え抜きの近衛兵たちのおかげで、黒龍軍団のいくらかは足止めを食らった。
しかし、将軍ヨークだけはどんな護りもものともせずついに聖旗の祀られる聖堂へと辿り着いた。
「まさか城の旗にカモフラージュしてあるとはねえ。あんな禍々しい物をなあ」
ついに念願の物が手に入る悦びにヨークはクツクツと笑いが止まらない。
仰々しい木製の扉の前に立ち、部下たちがそれを開くのを待って踏み出そうとした。
瞬間。
開いた扉と一緒に、先頭の兵士の首が吹っ飛んだ。
「…っ!?」
事態を把握する前に白銀の刃が弧を描き、二人目、三人目の首を落とした。
「下がれっ!!」
咄嗟に後ろへ跳ね飛びながらヨークが叫ぶ。
けれど、血を纏った剣はその勢いを弱めないまま後ろへ下がりきれなかった四人目の頸動脈を切りつけ、絶命する兵士の腹を蹴って華麗に後方へ跳び着地した。
「なん…だ!?」
アイスリット越しに睨み付けた鉛色の瞳が見たものは、純白の鎧に身を包んだ小柄な剣士であった。
「アン様っ!!」
「下がってなさいサラ!貴女が戦える相手じゃないわ!」
一望した扉の奥には、立ちはだかる純白の剣士とその後ろで震えながら剣を構えるへっぴり腰の兵士。それに槍を構えた兵士が数人こちらを見据えていた。
「…純白の鎧…まさか、聖乙女か?」
ヨークは思わずアイスリットを上げてその姿を映した。
「あっはっは!!こりゃいい!!隠れるどころか聖乙女自らお出迎えとはな!
お前ら!あの女は生け捕りだ、殺すなよ!!」