禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
狭い扉を通らなくてはいけない場所は槍兵にとって有利であった。
第一騎士団から派遣された槍兵とアンの剣技によって黒龍軍団はなかなか聖堂を侵略出来ないでいる。
業を煮やしたヨークが自軍の兵を押し退けて前へ進み出た。
「どけ!!ウザってえんだよ!」
下劣な怒鳴り声と共にゴウ!と凶悪な炎が突然燃え上がった。
「なっ…!?」
自軍の兵もろとも邪魔な槍兵を一瞬で塵にし、ヨークはゆっくりと聖堂の中へと歩み入った。
「なっ、なんですか!?今のは!?」
サラがへっぴり腰を更に及ばせながら叫ぶ。
「…まさか…魔法……?」
剣を構えながら言ったアンに、ヨークは炎を放った左手をグッと握りしめながら
「正解。さすが聖乙女、分かってんじゃねえか」
と答えてカツカツと歩みを進めた。
ヨークはやっと入れた聖堂をぐるりと見回すと、正面に飾ってある古い国旗に目を止め
「あった。間違いねえ、あれだ。
おい!回収しろ!傷付けんなよ!」
そう部下に指示を出した。
「待ちなさい!聖旗は渡さないわ!」
旗に向かった兵を慌ててアンが追おうとすると、再びゴウ!と云う音がアンの足元で起こり、その足を止めた。
「聖乙女のねーちゃん、あんたの相手はこっちだ。俺が直々に拐ってやるぜ」
(…あの鎧の紋章は…こいつが黒龍軍団の将軍ヨーク…!?)
アンはヨークの鎧に刻まれたヘマタイトを睨み、彼に向けて剣を構え直した。