禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「あ、アン様ぁっ!!」
すくむ体を必死に支えながらサラは奪われようとする聖旗とアンを交互に見やった。
聖堂には、剣と剣のぶつかる硬質な音が響く。
ヨークの使い込まれ鍛え上げられた鋼鉄の剣とアンの白銀に光る剣が火花を散らす。
アンは自身の為に作られたシャムシールにも似た湾曲の刃を扱っていた。
彼女の素早さを最大限活かすため、その軌道で相手を確実に切り払うよう城の鍛冶が特別に作った物だった。
ただし鋭利さと軽さに長ける分、鍔迫り合いには弱い。アンはヨークの甲冑の隙間から確実に急所を狙っては斬り込み、防がれると素早くその身を後ろに飛んで引いた。
アンが跳び、打ち、ヨークがそれを防ぐ。攻防は一見するとアンが有利に思われた。しかし。
「ヒラヒラと素早いねえちゃんだな。そこらの兵隊よかはよっぽど強えよ」
ヨークはアンの攻撃を全て寸出で交わしていた。まるで攻撃を見切ってるかのように。
アンもそれに気付き、一瞬たりとも気が抜けない事を悟る。攻撃の手を止めた瞬間こちらがやられる、と。
だが、次の瞬間。
「きゃ、キャアアッ!!!」
「…!!サラ!?」
背後から聞こえた甲高い叫びに、アンの視線が一瞬ヨークから逸れた。