禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
それを捕らえたヨークの口角が上がる。
「…しまった…!」
アンが視線を正面に向けた時には、ヨークの剣はアンの目前に迫っていた。
ガキィィン…と鈍く硬い音が聖堂に響いて、一瞬の静寂の後にガランッと床に鉄の落ちる音がした。
「あ…アンさまぁっ!!」
旗を奪おうとする兵士に突き飛ばされて尻餅を着いてたサラが悲痛な叫びを上げる。
けれどそこにいた兵士達はサラを除き、目の前の光景に一瞬息を飲んだ。ヨークさえも。
間一髪で交わしたヨークの剣は、アンの兜を砕きそれを地に落とした。
途端に鉄のマスクに隠されていたアンの素顔と黄金色の髪がその全貌を表す。
白い兜の下から溢れだした太陽の光のような光景に、初めてそれを見たギルブルクの男達は刹那目を奪われた。
己の危機に険しい顔で唇を噛み締めるアンとは対照的に、ヨークは堪えきれない好奇心を丸出しにして笑った。