禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「ぐああああああっっ!!!」
血飛沫をあげて、黒い炎はヨークの手甲に包まれた腕ごとガシャリと落ちた。
「アン!!」
「…兄さん!!?」
黒い炎が唸ったと同時だった。突風の様な勢いで駆け込んできたリヲがその勢いのまま、アンに向かって突き出されていた忌まわしい腕を切り払ったのは。
鉱物に優れ武器の生成に優れたデュークワーズの王宮支えの鍛冶が国で一番の剣豪の為に作った剣。それはリヲの剣技と相まって、手甲に包まれた腕さえも切り落とすに容易い鋭さと硬度を持っていた。
「アン!無事か!?」
ヨークの腕を切り落として尚攻撃の構えを解かず、リヲはアンを背に庇って言った。
「私は大丈夫…それより女王陛下は!?」
「陛下は無事だ、王宮の間は全く攻めこまれていない。奴らの狙いは陛下の命ではなく、どういうワケか聖旗らしいな」
アイスリットから鋭い眼光を覗かせリヲは聖旗を持ち去ろうとしているギルブルクの兵士達を睨んだ。その威圧に旗を抱えていた兵士がビクリとすくむ。