スイートペットライフ
事務所に戻った私は、今日の報告を所長にしてデスクで経費の精算をしていた。

「はぁ～疲れた」

思わずため息をつき、机に額をつける。

「何どうしたの？ずいぶんお疲れじゃない。美空」

隣の佐和子先輩がパソコンを打つ手を止めずに言葉だけかけてくる。

「なんだか今日はとても疲れました。もうこれ終わったら帰ります」

まだまだ仕事はあったけど、今日は早めに帰ろう。

そう思い、パソコンの電源を落とした。

ふと諏訪君に言われたことを思い出す。

『三橋興産の件で何か困ったことがあったらすぐに俺に電話して。絶対』

諏訪君のデスクを見たらまだ戻ってきていなかった。

実際何か被害にあったわけじゃない。わざわざ今日言わなくてもいいか。

そう思い事務所を後にした。

まっすぐに駅へ向かってもよかったのだが、思い出した。

家に帰っても、落ち着けないことを。この時間だとまだ帰ってきてないとはいえ帰って来たあとは、非常に疲れる会話をしながら人間の尊厳を死守しなくてはならない。

考えると、一気に疲れが増した気がした。

「コーヒー飲んで帰ろう」

私は迷わず、所長の奥さんがしている喫茶店「北極星」に足を向けた。
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