スイートペットライフ
「そういう問題じゃないだろ」

いきなり低い声を出されて驚く。

「ど、どうしたの?」

「お前、俺が言ったこと忘れたの?何かあったら電話してこいって」

そうだった、諏訪君は心配してそう言ってくれてたんだ。

「ちゃんと覚えてるよ。だけどまだ何かされたわけじゃないし……」

「何かされてからじゃ遅いだろ。これからは何かあったらちゃんと話せ」

いつもと違う強引な言い方をする諏訪君。

「でも大丈夫だよ。前にも言ったけど心配し過ぎ」

そう言った私の肩に手を置いて諏訪君は言った。

「お前もう少しいろんなことを自覚したほうがいい」

そう言うと、諏訪君は“がくり”とうなだれた。

良く分からないけど、心配してくれていることは分かる。

「ありがとう」

私がそう言うと、「おう」と小さい声で返された。

「もう遅いから駅まで一緒に行こう。このデータ明日の朝でも間に合うから」

担当の先生がそう言うなら、大丈夫だろう。

私はすぐにデータを保存してパソコンの電源を切った。

「早くしろよ。行くぞ」

出入口から諏訪君に声をかけられる。

「ちょっと待って。すぐ行く」

そう返事をしながら、急いでバッグを掴んだ。

事務所の外にでると、綺麗な三日月が浮かんでいた。

お互いそれを見上げている。

「綺麗だな」

「うん、綺麗」

そう言いながら歩き始めた諏訪君の背中を少し後ろから追いかけるようにして歩いて駅に向かった。
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