スイートペットライフ
「何やってんだよ!」

遠くから声が聞こえた気がしたのに、気が付くとその声の主はすぐそこにいて、目の前にいた三橋課長を私から引きはがしていた。

「き、君何だね!失礼じゃないか」

突き飛ばされて尻もちをついたまま若干動揺した声で返してくる。


「諏訪君!」
私は救世主の名前を叫び、彼の陰に隠れる。

「女の子を無理矢理ひっぱって車に乗せようとしている人に失礼とか言われたくないね」

そう言って、敵を睨みつける。

「何言っているんだ、僕たちはただ話をね――」

「ごちゃごちゃ言ってないで、ここから消えろ。お前のパパに全部ばらしてもいいんだぞ」

そのセリフを聞いた途端サーッと三橋課長の血の気がひいた。

「な、何を言うって言うんだ!フン。ちょっと夢子ちゃんに似ているからっていい気になりやがって」

なってない!なってない!むしろ迷惑千万デス。

「くそー!おぼえていろよー!」

マンガで見るお決まりのセリフを吐き捨てて三橋課長は車に乗り込み消えて行った。

走り去る車を見て私はへなへなとその場に座り込んだ。

「おい!大丈夫か?」

隣にいた諏訪君が驚いて支えてくれる。

「あ、ありがとう。ほーんとにありがとう」

無理矢理笑顔を作って、お礼を言う。

「いや、間に合ったからいいんだよ。何か昼間の電話切った後嫌な予感してさ」

そう言った彼は私の手が震えているのに気が付いたのかギュッと握ってきた。
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