スイートペットライフ
「いや、いいんだ。返事もゆっくり考えてくれたらいいよ」

そういいながら、彼の胸から解放された。そのまま左手を握りしめられた。

「駅だろ?一緒に行こう」

いきなりの告白に頭の中はパニックで、頬があり得ないくらいの熱を持っていた私は“こくり”と頷くことしかできなかった。

ゆっくり駅にむかって二人歩きだす。

「お前の言った通り、今日いいことあったわ」

「何?」

少し落ち着きを取り戻した私が尋ねる。

「お前にちゃんと気持ちを伝えられたから、これからは我慢しない」

そう言って、顔をのぞきこまれて私の顔まますます赤くなった。

一体何を我慢しなくなるの?聞きたいような聞きたくないような。

間違いなく私は諏訪君にドキドキしている。それは疑いようのない事実だけど、繋がれている左手に違和感があるのも事実で私は二つの自分の中の気持ちを持て余しながら歩いていた。

握られた左手はいつもの感覚とは違う。相手が違うんだから当たり前なんだけどなんだかその手が大倉さんを裏切っている気がして少し心が痛んだ。
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