スイートペットライフ
急に休憩室まで連れてこられた諏訪君はどうして連れてこられたのか理解していない様子だ。

「あの、みんなの前では話しづらいというか、その……」

佐和子先輩の好奇の目に諏訪君が気付いていないわけない。

「そんなことか……。俺昨日言ったよな。もう我慢しないって」

そいう言った彼の瞳の中に男の色気らしきものを察知して思わずときめく。

「でも、昨日の今日であんなふうにみんなの前で色々されると、そういうの慣れてないから正直困るというかなんというか……」

彼の眼を直視できずにうつむき加減で話す。

「青木は、もう少し考えたいから大っぴらにするのは嫌だってこと?」

「嫌っていうか――」

諏訪君のストレートな物言いに怒っているのかと思い、ぱっと顔を上げる。

「ごめん、ごめん別に怒っているわけじゃないんだ青木がもう少し時間が欲しいっていうなら、所内ではなるべく今まで通りにする」

そう言って私の横髪をさらりと撫でた。

「その代わり、今日は仕事終わり一緒に飲みに行こう。職場以外ならいいんだろ?」

そう言われると「うん」としか答えようがない。だって彼の事をもっと知りたいと思っているのは間違いないから。それが恋かどうかは別として。

「じゃあ後で連絡する。俺先に行くな。そのほうがいいんだろ?」

そう言って休憩室から先に出て行く諏訪君を見送った。

諏訪君は一体どうしちゃったんだろう。昨日までは微塵もそんな態度を見せなかったのに急に色気をはらんだ瞳で髪をやさしくなでるというボディタッチまでで繰り出したのには驚いて、胸がきゅうっとなった。

これから私の心臓、彼の“本気”に耐えられるのだろうか?

そんな風に思いながら休憩室代わりの会議室に戻ると、佐和子先輩が待っていましたとばかりに、私にすり寄ってきた。

あぁ、この人には本当に隠し事が出来ない……。洗いざらい吐かされた後「あー職場の楽しみが増えたわ~」なんて悪魔笑顔をみせられた。

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