スイートペットライフ
くすくす笑っていた私は、諏訪君からビールジョッキをうけとると「お疲れ」という諏訪君のセリフとともにお互いのジョッキを“こつん”とぶつけた。

「はー。のど乾いていたからおいしい」

そう言って、三分の一ぐらいビールを飲んでジョッキを机に置いた。

「いい飲みっぷりだな~」

そう言われて、途端に恥ずかしくなった。

ついついいつもの調子で飲んだけど、これは実はデートではないのか?いや、付き合ってはいないからデートじゃないか?いや付き合っていなくてもデートなのか?一人で脳内会議をおこなっても堂々巡りだ。

そんな脳内会議中の私のことなど露知らない諏訪君はお通しのホウレンソウのお浸しをあっと言う間にたいらげて、「飯まだか~腹減った~」なんて言っている。

考えてみると男の人と純粋に二人っきりで食事などといつぶりだろうか?大倉さんはちょっと異色(で変態)だから横に置いておくとして、学生時代に付き合っていた彼氏以来だから……。もう考えるのよそう。

脳内会議でちょっぴり切なくなった私は、ふと諏訪君のほうを向くと彼の目がじっとこちらを見つめていることに気が付いた。

「あ、ごめん」

そう言って視線をそらされると意識してしまう。そういえば昨日好きだと告白されたばかりだ。忘れていたわけではないけど、意識すると緊張してきた。

「お待たせしました~」

と先ほどの彼とは違う若い男の子が料理を運んできた。いい感じのタイミングに“グッジョブ”と彼を誉めてあげたい。

「うまそ~早く喰おうぜ」

諏訪君は私の緊張を知ってか話を食事に向けてくれた。ありがたい。こういう気遣いができるところが年齢よりも彼を大人に見せてしまうんだろうな。
次々に運ばれてくる料理をつつきながら、仕事の話や学生時代の話をしてくれた。

諏訪君とバンダナの彼(本橋君というらしい)は中学からの同級生でずーっと一緒にテニスをやっていたらしい。さわやか諏訪君にはぴったりの競技すぎて笑えると思ったけど、口には出さないでいた。
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