スイートペットライフ
***

半分払うと言い張る私に「友達価格だから大丈夫。次は青木がおごって」そう言って支払をさせてもらえなった。

さりげなく次の約束がされたみたいで、くすぐったい。

会計をしている諏訪君を店の外で待っている。蝉こそは鳴いていないけど夏の夜らしく立っているだけポニーテールから落ちたおくれ毛が首に張り付いているのがわかる。

それをハンカチでぬぐっていると「おまたせ」と言いながら諏訪くんがでてきた。

駅に向かって歩いている。さりげなく車道側を歩いてくれることや、ときどき触れる彼の腕と私の肩で身長差を感じてそれにもドキドキしてしまう。

すると、私の手を徐に諏訪くんが掴んできた。それはもう遠慮がちに。
私はその瞬間びくっとなったのが自分でもわかるくらい驚いていた。

「ごめん。酔っているから許して。ちょっとだけ」

そう言うと、“きゅ”っと手を握り直してきた。
ただでさえ暑い夏の夜に私の体温で地球温暖化が進んでないか心配になる。
握られたその手は離れることなく駅についた。

「送っていく」

そう言った諏訪くんの言葉で現実に戻る。
送ってもらうと言っても私が帰るのは大倉さんのマンションだ。
税理士という仕事がら相続関係の仕事も多く扱うから財産評価や土地の値段なんかは他の仕事よりも詳しいはずだ。

そこであのマンションまで送ってもらうとなると……。
間違いなく詮索される。だって私みたいな庶民がすむ場所ではないから。

必死で言い訳をして(もう半分パニックだから何て言ったかおぼえてないけど)何とか別々の電車に乗り込んだ。
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