スイートペットライフ
「おはよう。僕のかわいいミィちゃん」

何かもう朝の挨拶からすでにいらないセリフで飾り立てられてて、何も食べていないのにお腹がいっぱいな気がしてきた。

でもダイニングに並ぶサクサククロワッサンやクルミパンを見ると身体は正直で“ぐぅ~”っと音を立てた。

「はは!ミィのおなかも目覚めたことだし食事にしよう」

オムレツをお皿に乗せてくれている大倉さんの脇をすりぬけて、コーヒーをサーブした。
お揃いのマグカップにコーヒーを入れるのが朝の私の役割だった。

二人向かい合って朝食を食べる。この時間が結構好きだったりする。
母子家庭でフリーで仕事をしていた母親は朝食を食べる習慣がなく、小さい頃はそれでも準備はしてくれたが朝食を一緒に座って食べるということはなかった。
ぼんやりパンを口に運んでいると、大倉さんが思いついたように尋ねて来た。

「昨日、ミィも帰りが遅かったみたいだけど、何してたの?」

そう聞かれて、もう少し咀嚼しないとのどを通れない大きさのパンがのどに引っかかった。

「ごほ…ごほ」
うーくるしい。思わず涙目になる。大倉さんは「大丈夫?」と心配そうに私に目を向けてマグカップを取ってくれた。

「あの、別にちょっと会社の人とですね…あの、飲み会だったんです!」

われながら嘘ではない言い訳を答えられたと思う。やるじゃん私。

この時うまく事を運んだつもりだった私は、大倉さんの“キラリ”と輝く千里眼に気が付いてなかった。

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