スイートペットライフ

「あ・ん・た・ねー！これから、恋愛に発展しそうな相手に『私、実はイケメン社長に飼われてるんですぅ』なんて言うつもりだったの！？」

「いや、もっとこうオブラート的なものに包んで……」

「どうやってよ？だいたい世渡り下手のあんたが諏訪君みたいな頭の回転の速い男に今の状況をどうやってオブラートに包んで説明するわけよ？え？言ってみな？」

佐和子先輩は私のほっぺを引っ張りながら話す。

「う～はなじでぇ～」

真剣に怒られて、頬をつねられた。涙目になる痛さだ。
佐和子先輩が頬を離してくれた。

「だって、隠し通せる自信がないんです」

「それでも意地でも隠しなさい。もしあんたが本当に諏訪君との今後を考えてるならね」

そう言って、お弁当をまた食べ始めた佐和子先輩。

やっぱり、大倉さんと私の関係を理解してもらおうなんて虫がよすぎるのかな。

諏訪君と向き合うとなると一刻も早くあのマンションを出ればいい話なんだけど、何故だかそう考えるとさみしいような、後少しだけでもという気持ちが芽生えて、賃貸情報誌をめくる手がスローダウンし、やがてとまってしまう。そして“パタン”と閉じられる。それの繰り返しだ。

これは、諏訪君と向き合う覚悟ができていないせい？それとも大倉さんとの生活に心地よさを感じている自堕落な私のせい？答えは出ないままだった。