スイートペットライフ
そう思った時は時すでに遅しで、大倉さんは眉間に皺を寄せて目を細めてこちらを見ていた。
間違いなく誘導尋問に引っ掛かった……。

「ブリーディングはしてないけど、抱きしめられたと?」

今までみたことないような冷たい目で私を見る。

「は…い」

何だかいつものだだっこみたいに、暴れたりしてくれるほうが扱いやすい。こんな大倉さんは私知らない。

「ふ~ん。こうやって?」

その言葉を聞いた瞬間、大倉さんに抱きしめられていた。それはいつものふざけた感じではなくて、痛いくらいの力の強さで。

「離してください。大倉さん…ねぇ」
「ダメだ。もう少しだけ、消毒まだ終わってないから」

そう言ってさらに腕に力を込められた。
しばらくすると腕をゆるめた大倉さんが私のほうを見ずに言った。

「ミィ、もう遅いからお風呂に入って寝なさい。おやすみ」

そう言い残すと、自分の寝室へとまっすぐに向かって、こちらを一度も見ずにバタンとドアをとじた。

諏訪君に抱きしめられたときの胸のドキドキと違う感覚が胸に押し寄せる。
熱くてジンジンするような感覚に私はその場を動けずにただ、大倉さんが消えて行ったドアを見つめるだけしかできなかった。

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