スイートペットライフ
***

リビングと玄関をつなぐ廊下を私はあっちにウロウロこっちにウロウロしていた。

理由はもちろん大倉さんに今日の話を聞くためだった。だけど今日に限ってなかなか帰ってこない。いや、待っているから待ちわびているから、帰りが遅く感じるのかもしれない。

スマホを見つめて連絡してみようかと、キーロックを解除しようとしたときに玄関の扉が開いた。

「お、大倉さん!!」

玄関を開けた途端大きな声で名前を呼ばれて、入ってきた本人はすごく驚いていた。

「わ!びっくりした~。ミィこんなところで何やっているの?お出迎え?むふふ~うれしい~」

「むふふ~じゃないです!それよりも今日のこときちんと説明してください!」

私は大倉さんとの距離をじりじりと詰める。自分から彼に近寄って行ったのなんか初めてのことではないだろうか?

「ん~説明ねぇ~」

大倉さんは呟きながらネクタイを緩めリビングへと向かった。私はパタパタとその後を追った。

リビングのソファに大倉さんがドサリと音を立てて座る。疲れているのだろうソファにもたれかかるようにして座っている姿から疲労感が漂う。

しかしそんなことにかまっている暇はない。私は大倉さんのテーブルをはさんだ向かいに腕を組んで立った。

「一体どういうことなんですか!?無理矢理担当を変えるなんて。どうして諏訪君なんですか?」

「諏訪君ねぇ……」

どこか不満そうな顔で呟かれる。

「昨日は諏訪センセイと読んでいたのに、今諏訪クンって言った」

ん?それがどうしたって言うの?

話の意図が掴めずに不思議そうにする私に不機嫌を隠そうともしない表情で話しを続ける。

「そもそも僕は君の事務所からすればクライアントだ。だからクライアントの意向にそって、担当を変えても何ら不自然なことなんてないだろう?」

「そんな、急にこんなことになるなんておかしいです」

「ビジネスは即断即決が大事だからね」

そう言って二コリと笑う。その笑顔になんだか無性に腹が立った。

「ビジネスって言うよりも、私の監視のためですか?」

「監視?」

私のその言葉に眉をひそめる。
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