スイートペットライフ
事務所について、いつも通り業務を始める。
電話が鳴り、伝票を入力して……。いつもと何も変わらない日常。
私は手元にある決算報告書をながめる。
そこに記されている大倉さんの名前をそっと指でなぞった。
これは朝一番に諏訪君から渡された昨年の決算書だ。
前の担当税理士から引き継ぎを受けた彼が私も目に通しておいたほうが後々のためだと渡してくれたのだ。
「はぁ」
溜息が洩れる。それを聞き逃さない佐和子先輩。
「なに?また誰かにいやがらせされてるの?」
眉間に皺を寄せて聞いてくる。
「いいえ、違います。ちょっと色々思うところがあって」
「エバースターのこと?」
手元に資料を持っているので、そのことについてだと思われたようだ。
「まぁ、広義の意味ではそういうことです」
「広義の意味ではね……。とりあえず今は仕事中よ。集中しなさい」
ピシャリと言われて、背筋が伸びる。
「はい。ありがとうございます」
そう答えた私の肩を佐和子先輩がポンとひとつ叩いた。
仕事を終わらせて定時にあがった。諏訪君からお誘いのメールが入っていたけど今日はどうしても早く帰りたかったから断った。朝からの私の様子をみて「なにか用事?」とそれとなく探られた気がしたけれど、あいまいに笑って退社した。
駅からマンションに向かう足取りがいつもよりも早い。
何を言うべきかなんて何も考えていない。だけど早くあの部屋に帰って大倉さんの帰りを待ちたかった。
部屋に入ろうとロックを解除すると、部屋の中に人の気配があった。
「大倉―オミ君!」
私は思わずそう叫ぶと、靴も揃えずにリビングに飛び込んだ。
電話が鳴り、伝票を入力して……。いつもと何も変わらない日常。
私は手元にある決算報告書をながめる。
そこに記されている大倉さんの名前をそっと指でなぞった。
これは朝一番に諏訪君から渡された昨年の決算書だ。
前の担当税理士から引き継ぎを受けた彼が私も目に通しておいたほうが後々のためだと渡してくれたのだ。
「はぁ」
溜息が洩れる。それを聞き逃さない佐和子先輩。
「なに?また誰かにいやがらせされてるの?」
眉間に皺を寄せて聞いてくる。
「いいえ、違います。ちょっと色々思うところがあって」
「エバースターのこと?」
手元に資料を持っているので、そのことについてだと思われたようだ。
「まぁ、広義の意味ではそういうことです」
「広義の意味ではね……。とりあえず今は仕事中よ。集中しなさい」
ピシャリと言われて、背筋が伸びる。
「はい。ありがとうございます」
そう答えた私の肩を佐和子先輩がポンとひとつ叩いた。
仕事を終わらせて定時にあがった。諏訪君からお誘いのメールが入っていたけど今日はどうしても早く帰りたかったから断った。朝からの私の様子をみて「なにか用事?」とそれとなく探られた気がしたけれど、あいまいに笑って退社した。
駅からマンションに向かう足取りがいつもよりも早い。
何を言うべきかなんて何も考えていない。だけど早くあの部屋に帰って大倉さんの帰りを待ちたかった。
部屋に入ろうとロックを解除すると、部屋の中に人の気配があった。
「大倉―オミ君!」
私は思わずそう叫ぶと、靴も揃えずにリビングに飛び込んだ。