スイートペットライフ
「きちんと連絡せずにごめん」

綺麗な目を伏せて申し訳なさそうな表情をする。

「イジワルしたかったわけじゃないんだ。色々考えていて……」

いつもとは違う落ち着いたもの言いに、私も真剣に耳を傾ける。

「ミィの言いたいこと多分理解できていると思う。自分で言うのもアレだけど、僕は人とだいぶ考え方がかけ離れているから」

自分がおかしいって知っていたの?私はそこが一番の驚きポイントだった。

「ミィがね、戸惑いながらも受け入れてくれていることに甘えていたんだね」

私の頭を撫でながら優しい眼差しを向けられた。

「た、確かに私、オミ君の行動に度肝を抜かれて振りまわされっぱなしだけど……それでも、この一週間オミ君におはようって言いたいと思ったし、ただいま、おかえりなさいをオミ君としたかった」

母子家庭の私は正直家に誰もいないことなんて日常茶飯事すぎて普通だ。だから今までこんな風に思ったことなんてなかった。

それがどうしてそうしたかったのかまだ私の中で説明がつかないけれど、だけどオミ君との時間がなくなって辛かったことだけは真実だ。

「そっか。ごめんね。さみしい思いをさせて」

そう言って大倉さんの長い腕の中にすっぽりとおさめられて見かけからは想像できないたくましい胸に顔を押し付けられた。

「明日のお弁当は出汁巻き卵一個多くしてください」

拗ねた声でそう甘えてみる。

「はい、はい。分かったよ。いいこと思いついた別のお弁当箱に出汁巻卵だけ詰めようか?それならお腹いっぱい食べられるよね?」

きらきら笑顔でこれ以上の名案はない!みたいな顔してる。

「それは勘弁してください」

「そう?名案だと思ったんだけどな……」

ちょっと唇を尖らせる大倉さんが可笑しかった。
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