スイートペットライフ
「ママ、サンヒョン今まで付き合ってきたタイプの人と随分違うね」

どちらかと言うとママは自分よりも若い男性と付き合うことが多かった。見かけも華やかでどこで出会うのか真剣に聞きたいと思ったことは一度や二度じゃない。

なのに、結婚を決意した相手サンヒョンはどちらかというと、背は高いけれどスマートな感じではなくてどこか無骨な感じで、でもそれに似合わないチャーミングな笑顔が印象的な人だった。

「美空、彼日本語分かるからね」

くすくすと笑いながらママが言う。

「えっ!?うーごめんなさいサンヒョンさん」

私はバックミラー越しに彼に謝った。彼は肩をすくめて軽くウインクを返してくれた。

良かった、どうやら怒ってはいないみたい。

「そうね、サンヒョンは他の誰とも比べられないわよ」

そう言ってにっこりと笑ったママの顔は愛されていることが一目瞭然の“女”の顔だった。

サンヒョンの運転で、ママと私はサウナへと連れてこられた。

「身体じゅう悪いものがたまってそうだから、ここですっきりしましょ」

そう言って私を車から降ろした。

一緒に来たがっていたサンヒョンだったけど、お店があるからと手を振りながら帰っていった。

着替えてサウナを満喫する。私はあかすりもしてもらって身体は十分リフレッシュされた。ただ頭の中はぐちゃぐちゃのまま。

あかすりが終わった私をママが呼びよせて、ゆで卵とシッケという飲み物を渡された。

頭にタオルを巻いたママはゆで卵を剥いてほおばっていた。

「ママ、急に来てごめんね」

「ん~」

特に聞きだす様子もない。だけどこれがママが真剣に話を聞くときの合図だ。いつもはベラベラと話すママが私の話を聞こうとするときは何も話さない。
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